研究

資料研究

能楽研究所には、室町期写本、江戸期の写本・版本、明治期以降の活字本、雑誌、絵画、図録、外国語文献、その他、室町時代から現代におよぶ能楽関係資料が揃い、調査・研究に活用されています。野上豊一郎旧蔵の安土桃山期の「車屋謡本」をはじめ、仙台伊達家旧蔵「伝観世小次郎信光謡本」、「堀池謡本」や最古の狂言本『天正狂言本』など、貴重書が少なくありません。

能楽研究所は、日本の能楽研究の中心として、資料の収集・整備・研究・公開に努めています。

蔵書の中にはまた、「鴻山文庫」「般若窟文庫」「観世新九郎家文庫」等々、多くの方々の御芳志により図書・資料の寄贈を受けた、貴重な図書や資料も多数含まれます。
(文庫については こちら をご覧ください)

能楽研究所では、こうした蔵書や特殊文庫について調査・研究と目録作成を進める一方、全国各地の諸家諸機関に伝わる能楽資料の調査と、写真撮影による蒐集も進めています。こうした調査と撮影によって蒐集された主要な資料の写真も、能楽研究所の蔵書と同じく閲覧室で閲覧することができます。

新しい学際研究

能楽研究所は、世界的水準の研究基盤や人的ネットワークを活用しつつ、国内外の研究者が最先端の成果を共有し互いに学び合い、多様な研究の中から新たな可能性を追求する、真のグローバル化を目指しています。

本学のシステムデザイン学科と協力し、新しい学際研究プロジェクトを進めています。日本の伝統文化に基づく「所作」の科学的解明を進める「所作学」プロジェクトです。能の「所作」を科学的に分析し、その合理性や最適性、美的な感性を構成する要素などを追究していきます。従来「幽玄」「花」といった言葉で表現されてきたものの内実、「所作」の核となるもの客観的に記述されれば、古典芸能の教育・研究にも役立てることができるでしょう。また、能の身体作法を構成する原理が、世界の他の身体芸術に応用されることも可能となり、「日本的」な美がよりグローバルな価値として世界的に共有できると考えています。


仕舞の3Dアニメーション合成

謡曲テキストの翻訳に関する研究や、世阿弥能楽論用語の英訳データベースの作成などを進めてきました。海外から第一線で活躍中の能楽研究者を招き、シンポジウムや公開セミナーを開催もおこなっています。日本での能楽研究とは違うアプローチや研究方法を知り、対等に議論するための共通の基盤を作ることが目的です。

アメリカのコーネル大学が主導するGloPAC(The Global Performing Arts Consortium グローバル舞台芸術コンソーシアム)にも全面的に協力し、能楽に関する資料や研究成果を世界的に共有できるシステムの構築を目指しています。


共同利用・共同研究拠点

このたび、当研究所が文部科学省の定める共同利用・共同研究拠点に認定されました。これは我が国全体の学術研究の基盤強化と更なる発展のため、分野ごとに研究推進の核となる大学を共同利用・共同研究拠点として認定し、その研究基盤の整備を目指したもので、平成20年7月の学校教育法施行規則の改正とともに、新たに設けられた制度です。人文学の分野では、これまで東京大学史料編纂所、早稲田大学演劇博物館、神奈川大学日本常民文化研究所などが同拠点として認定されていますが、能楽研究に特化した研究拠点としては、本研究所がはじめての認定となります。

野上記念法政大学能楽研究所は昭和27年の設立以来、古典籍を中心とする貴重資料の収集に努めるとともに、あらゆる分野で能楽研究を牽引してきました。今回の共同研究は、その成果の上に、能楽の国際的・学際的研究のさらなる推進を目指すものです。認定期間は、第一期平成25年5月から平成31年3月まで、第二期は平成31年4月から令和7年3月まで。研究の概要は以下の通りです。

「国際・学際的視野による能楽研究を確立するため、国内外の研究者と共同して、豊富な文献資料に基づく実証的研究を進めるとともに、総合芸術としての能楽に対応した多様な視点による新たな研究の創造、国際的研究のための方法論の共有をめざす。」

〔主な研究テーマ〕
     ①能楽研究所所蔵資料に基づく文献学的・国語学的研究
     ②江戸時代の能楽についての学際的研究
     ③能楽の演出・技法に関する総合的研究
     ④国際的視野に基づく新たな方法論構築のための能楽研究